泌尿器科
泌尿器科
水分の調節と同時に老廃物の排泄をするはたらきをもつ腎臓に始まり、尿管、膀胱、尿道へと連なる尿路、および前立腺などの男性生殖器を中心に治療します。
対象となる臓器の形態が男性と女性とではかなり異なるため、泌尿器科で扱う疾患には、男性だけの病気と女性に多い病気のそれぞれがあるのが特徴的です。
泌尿器科の診療範囲は幅広いのですが、具体的な疾患としては、膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎(じんうじんえん)、前立腺炎、精巣上体炎、前立腺肥大症、尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石など)、陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)、性感染症(クラミジア感染症、淋菌感染症、尖圭コンジローマなど)、腎細胞がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣腫瘍、勃起障害(ED)など挙げられます。
トイレが近い、頻繁に夜中に起きてトイレに行く、尿が漏れる、排尿に勢いが無い、尿が出にくい、尿が出なくなった、残尿感がある、尿をしてもすっきりしない、尿をするときに痛みがある、尿をした後に痛みがある、尿に血がまじる、尿検査で陽性(尿潜血・たんぱく尿)を指摘された、尿道や股間の奥(会陰部)に不快感がある、膀胱炎が治らない(再発するなど)
膀胱は正常であれば300‐500mlくらい尿をためることができます。尿は腎臓から常時流れてきますが、膀胱が尿を貯めるときは脳から脊髄を介して尿を貯めるように神経が働きます。膀胱に300-500mlくらいの尿がたまると膀胱が引き伸ばされ尿意(おしっこをしたい感じ)を感じることになり、我々はトイレへいき排尿します。しかし膀胱が敏感な人がいて、尿が膀胱に十分にたまっていないのに、急激な尿意やがまんできない感じ(切迫感)を感じることがあります。さらにがまんできずに漏らしてしまう場合もあり、このような状態を過活動膀胱といいます。過活動膀胱は中高年の女性や男性の場合でも前立腺肥大症に合併することもあります。
最近は過活動膀胱に対して有効な薬がたくさん出てきています。このような薬を服用しても症状が改善しない場合は他の疾患が隠れている可能性を考えて精密検査を行わなければいけないこともあります。
前立腺肥大症とは、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を来たす病気です。
統計的には日本の55歳以上の男性の約2割、5人に1人くらいに前立腺肥大の症状があると言われています。はっきりとした原因は解明されていませんが、加齢と性ホルモンがなんらかの影響を及ぼしていることは確かなようです。
健康なときには無意識に済ませていた排尿なのに、これがスムーズにいかなくなることで、日常生活に大きな支障をきたします。
発熱などを伴わない会陰部不快感、会陰部痛、頻尿症状、残尿感、陰茎痛が主な症状です。原因は多種にわたると言われ、なかなか治療が効かない場合もあります。しかし生活習慣の見直しや根気強くいろいろな治療を試すことで自分に合う治療法に出会えることも少なくありません。慢性前立腺炎もしくは慢性骨盤痛症候群でお悩みの方は当院を受診してみてください。
尿路に細菌が棲みつき、増殖して炎症を起こした状態を尿路感染症と言い、感染場所によって膀胱炎と腎盂腎炎、前立腺炎、副睾丸炎などに分類されます。細菌は尿道の出口から侵入すると言われていますが、他の経路(血液から入る)の可能性も考えられています。
膀胱炎では排尿時痛、残尿感、頻尿などの症状、場合によっては血尿を伴うこともあります。尿道に通過障害がある場合は発熱を伴うこともあります。尿検査を行うことで診断が可能です。治療は抗菌薬の服用です。膀胱炎にかかりやすい方は他の疾患が隠れている可能性もありますので一度精査をお勧めします。
腎盂腎炎では炎症の起きている腎臓がある側の側腹部から背部の痛み、発熱を伴います。痛みを感じない場合も多く、その場合は発熱のみの症状となります。咳、咽頭痛などの風邪症状を伴わないのに熱のみが認められる場合は腎盂腎炎の可能性を考える必要があります。身体所見、尿検査、血液検査で診断が可能ですが、場合によっては超音波、CTなどの検査が必要となります。この場合も抗菌剤による治療が必要です。場合によっては入院治療が必要なこともあります。尿管結石に合した急性腎盂腎炎では最近が身体中にばらまかれ、細菌から毒素が放出されると敗血症からショック状態という危険な状態になります。緊急処置が必要となるためなるべく早期に診断、治療が必要となります。
また、細菌が腎盂で増殖すると腎盂腎炎を起こします。
前立腺炎は急性の場合の多くは細菌による感染で、高熱(発熱)や排尿困難、排尿痛や残尿感、頻尿症状を伴います。男性で排尿痛や頻尿症状と共に発熱を生じる場合は急性前立腺炎の可能性が高く、早急な治療が必要ですのでなるべく早く受診してください。
精巣上体に細菌感染が生じると、左右どちらかの精巣、もしくは精巣周囲が急激に腫れ発熱と精巣痛を伴います。この場合もできるだけ早急な治療が必要となりますのでなるべく早く受診してください。
尿は膀胱と尿道がうまく連動して働くことによって排泄されます。これらを働かせるためには、命令を伝える神経がしっかりしていないとうまくいきません。
この神経が、脳梗塞、パーキンソン病、子宮がんや直腸がん手術の後遺症などにより障害を起こしたり、けが(脊髄損傷など)をしたりして神経障害を起こしたりして、排尿がうまく出来なくなった状態を神経因性膀胱と言います。放置すると尿路感染や腎機能障害などを引き起こすことも少なくありません。
前立腺がんの罹患数は急増しており、日本人の男性の罹患するがんの中で胃がん、肺がんを抜いてトップになりました。欧米人に多く発生しますが、日本でも食の欧米化に伴い増えていると考えられています。前立腺がんは末期になっても症状がでないことがありますので早期発見が重要です。血液検査で前立腺特異高原(PSA)を検査することでがんの可能性の有無を調べることが可能です。50歳以上の方はPSAの検査をお勧めします。当院ではPSA測定、直腸診、MRI(他院へ依頼)などにより前立腺がんが疑われる場合は前立腺生検(会陰部より前立腺に針を刺し前立腺の一部を採取し顕微鏡でがんの有無を調べる検査)を行い前立腺がんの診断を行うことが可能です。
タンパク尿の原因としては、急性腎炎や慢性腎炎などの腎臓に限局した病気と、糖尿病、膠原病、高血圧など全身の病気の一部として腎臓に障害が起きる場合があります。治療法が異なりますので正確な診断が必要になります。
腎臓内に生じた結石を、腎臓結石(腎結石)と言います。出来る場所によって、腎杯(じんぱい)結石、腎盂(じんう)結石などに分かれ、それらが大きくなったものをサンゴ状結石と呼ぶこともあります。腎臓内にある場合は痛みが無いことがほとんどですが、たまに血尿を認めることがあります。しかし、結石が腎臓から尿管に移動し、尿管に詰まると、腰から背中にかけての激しい痛みなどを引き起こします。この状態を尿管結石といいます。
腎臓でできた尿は腎盂に集められ尿管を通り膀胱へ運ばれ貯められます。腎盂、尿管、膀胱の表面は同じ移行上皮という粘膜で覆われていますが、これらの粘膜細胞にがんができることがあります。痛みなどの症状を伴わない血尿が出た場合は膀胱がん、尿管がん、腎盂がんを疑い検査を行う必要性があります。その後血尿が止まると治ったと思い放置し、2回目、3回目でようやく検査に訪れる場合があります。その時にはがんが進行してしまい膀胱がんの場合は内視鏡的な治療が不可能となることもあります。血尿があった場合はなるべく早く専門医を受診してください。
性感染症は、性行為によって感染を起こす病気の総称です。以前は性風俗店などでの不衛生な性行為による感染が多かったのですが、最近は、傾向として不特定のセックスパートナーとの性交渉やセックスの多様化などにより、広まりを見せています。
また、風邪のように喉が痛い(咽頭炎)などの症状で性感染症が発見されるケースも見られるようになり病状は多様化しています。代表的な性感染症は、淋病、クラミジア感染症(非淋菌性尿道炎)、梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、カンジダによる包皮炎、毛ジラミ症、エイズなどです。思い当たる節のある方や、パートナーが性感染症にかかっている方は早めに専門医の検査と適切な治療を受けることが早期治癒への大事な一歩です。